べき論、
正論では人は動かない。
前職は大手メーカーで人事部です。そこでの仕事はどれだけやっても、最後は看板に支えられて仕事が進んでいるのではないかと感じることがありました。たとえば4年目になって担当したリスクマネジメント。現場で起きる大小さまざまな問題の解決改善再発防止に携わることになって、現場の人と一緒に再発防止を考えたはずなのに、同じような問題がまた起きる。正しいことを言っても、「べき」では動かない。結局、人事だから現場の人が従っているだけなのではないか。「どうしたら現場の人が自ら動くのか」ということについて周囲に聞いたり、いろいろ調べたりしたけれど、表層的なものばかりで、どうも納得がいかない。1年位そんな状態が続き、会社も仕事も嫌いではなかったけれど、ここにいてもこの問題は解決できない、成長できないと思うようになりました。そんな時に出会ったのが、CESの考え方でした。
起きていることに
目を背けず受け入れる。
入社して数年は逃げたくなるような毎日でした。経営者からは仕事を任せてもらえない。先輩CEとは圧倒的な力量差。どうすれば力量をあげられるのか。一朝一夕に力量が上がるわけではない。一つ一つ努力して積み上げていくしかない。でも、努力したところで本当に身になるのか、このまま努力して大丈夫なのか。不安がよぎるばかりでした。
でも、あるとき感じました。こうやって逡巡することそのものが、お客様でも起きている問題なのではないか。“頭でわかっているけれど動けない”ということなのではないか。だとすれば、この場で起きていることから目を背けずに、受け入れた自分が何をやりたいのかを決めるしかない。そう考えるようになってから迷いはだいぶなくなったと思います。
自ら殻を破る瞬間に
遭遇できる。
小さな成功の積み重ねはあったものの、一つの大きな自信になった仕事は3年目のことです。前職の上司の紹介で大手プロバイダーにサービスを提供するチャンスをもらいました。社長にお会いする場を作ってもらったのですが、「今日は何の時間なんだ?」と人事への説教が始まり「じゃあまあ、やってみて。ダメだったらもう会わないから」で終わりました。
そしてプログラムが終わった後日のフォローの日です。「河島君に謝らなくてはいけない。プログラムに参加した奴らが私に歯向かうようになったんだよね、一人じゃ勝てないと思って、みんなでね」と嬉しそうな社長から言葉をいただきました。その後も5年にわたり継続してお取引をいただくことができ、最後には、社長から受講者の皆さんまで出演いただく事例DVDまで作ることができました。
自分ごととして考え抜くのがCE。
CEになって売り上げが上がらず苦しんでいた頃です。ある企業で、いいやりとりができて、「お客さんから求められたので次回事例を持っていきます」とQMでいうと「それはCEとしてプロじゃない」「事例ではなく、プロは、そのやりとりで自分に見えてきたものをもう一回こう思いますとぶつけるんだ」と言われました。未熟さはあるかもしれないけれど、自分で考えて考え抜いて、それをぶつける。自分で考えたことをぶつけることができるのが、この仕事では重要なのだと、今でもすごく心に残っていることの一つです。
何が正解かはわかりませんが、これからも試行錯誤しながら、社会的課題に対して、CESの見方、感じ方を通して従来とは違ったヒント、きっかけを提示できる存在になりたいと思います。
※QM/クオリティ・ミーティング=CESの品質向上のために、お互いが真剣勝負で切磋琢磨する定例ミーティング。